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福岡地方裁判所小倉支部 昭和30年(ヨ)219号 決定

申請人 全日本港湾労働組合関門支部

被申請人 上組合資会社

主文

被申請人は別紙目録記載の申請組合員に対し立体作業場の荷役、バナナ荷役、石膏荷役にも従事させねばならない又荷役の配分については他の常傭従業員と差別して不利益に取扱つてはならない。

(注、保証金五万円)

(裁判官 松山安馬 川添万夫 平佐力)

(別紙省略)

【参考資料】

仮処分命令申請

申請人 全日本港湾労働組合関門支部

被申請人 上組合資会社

申請の趣旨

被申請人は荷役の配分に付別紙記載の申請組合員に対し他の常傭従業員と差別して不利益に取扱つてはならない被申請人は右申請人組合員に対し立体作業場の荷役又はバナナ荷役石膏荷役に付他の従業員と公平に荷役作業を分配すべく右申請人組合員のみを同荷役から締出してはならない。

申請人の委任する福岡地方裁判所小倉支部所属執行吏は前二項の趣旨を記載の掲示を立体作業場バナナ荷役場石膏荷役場に掲示せねばならないとの旨の御裁判を求むる。

申請の理由

一、被申請人は港湾運送事業法に定める乙仲艀回漕、船内荷役作業並に沿岸作業を経営する会社であつて、その業務に従事する労働者は職員十数名の外に常傭労働者としては艀乗組合員四十九名船内作業員約三十名沿岸作業員約百二十名がその業務に従事している而して常傭労働者の中で職員を除く殆ど全員の者が昭和二十六年四月頃迄は申請人組合に加入していたが被申請人が申請人組合員に対し申請人組合員たるの理由を以つて他の従業員と差別して不利益な取扱を為した為漸次申請人組合から脱退し現在艀乗組合員全員四十九名と沿岸常備者五名外九名の別紙記載人員のみが組合に加入している。

二、事の起りは昭和二十六年四月頃それまで門司地区班と延命寺地区班とに別れて別口の作業をしていたのが延命寺班が全員組合を脱退した処以来被申請人に門司地区の作業を延命寺班に分ち現在では門司地区の作業量の六十パーセント迄延命寺班になさしめその人員を増加し之を二班に分けて逐次作業量の割当てを増大する一方申請人組合に属する従業員には仕事の割当を漸次縮少し殊に最近新に出来た産業セメント立体倉庫の作業を全然なさしめず又石膏やバナナの荷役は最も利益のある作業で作業員の希望して居るもので従来申請人組合員の作業であつたのを昭和三十年五月から之をとり上げて組合員にはなさしめない様になつた。

三、そこで申請人組合は被申請会社門司支店長に抗議した処「立体倉庫の作業はお前達にはさせられない申請組合員であるから従事させないその理由は争議が起つたとき得意に迷惑をかけるから今後も絶対作業させない」又「お前達は思想が悪いから仲間は増さない非組合員の班には幾人でも増加する申請組合員の班には今後作業の割当は全然しない」と言明した。

四、被申請人が以上の如く従業員に対し申請組合に加入していることを理由として不利益な取扱いを為しその圧力によつて組合から脱退せしめていることは不当労働行為として禁止せられねばならぬので不利益取扱禁止請求の訴提起準備中であるが其の判決確定を待つたのではその間に申請組合員は被申請会社の圧迫に耐えかねて申請組合から脱退せざるを得なくなり申請組合は被申請人の急迫な強暴により救ふ可からざる損害を蒙る虞があるので申請趣旨記載の御裁判を求むる為本申請に及んだ。

証明方法〈省略〉

右申請します

昭和三十年九月五日

申請代理人 大家国夫

福岡地方裁判所小倉支部 御中

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